ORIOは福岡市内の学校で、博多織の授業をひらいています。
福岡市が実施している中高生にむけた教育プログラムのひとつ、
「地域の伝統をデザインする 〜博多織と考える未来のキャリア〜」。
弊社が全体を監修し、パートナーである織元の筑前織物さんのハギレを活用して設計しました。
これまでに、二つの学校へうかがっています。
百道松原中学校
2026年1月9日、1年生から3年生まで約50名を対象に、学年合同の一斉授業として2コマ。
授業のあと、百道松原中学校の生徒がこう書いてくれました。
「何気ない日常の中で目にすることはあった博多織に、素敵な意味が込められていたことや、作り手の方や博多織を広めようとされている方の思いを学ぶことができてよかったです。」— 百道松原中学校・生徒
この一文が、しばらく頭から離れませんでした。
福岡で暮らしていれば、博多織はどこかで目に入っています。ただ、それが博多織だと知る機会は、あまり多くありません。
福岡市立西陵中学校

2026年2月6日、1年生を対象に、ふくやさん、トータルメディア開発研究所さんと3事業者が同時に入る形式で1コマを実施しました。



博多織についての授業、博多織のハギレを使ったしおりづくり、調べ学習、博多織を用いた商品アイデア考案、議論、発表と短い時間でしたが、濃密な時間でした。
アイデアも驚かさせるものが多く、資料にまとめて発表することにも慣れていて驚かされました。
西陵中学校の授業からしばらくして、1年生から手紙が届きました。
便箋に、拝啓からはじまる縦書きで。

最初は、難しそうだな。と思っていましたが、「一番最初は、誰に届けたいか。その次に何を届けたいか」。山本さんが話をしてくださったことを元に考えると、すぐに思い浮かびました。博多織や、何かを作る時は、誰に届けるかを一番考えているのだな、と思いました。
たくさんの案が出たりしたけど「それはもうあるんじゃない?」などの意見が出たりもしました。検索してみるとたくさんの商品が出てきて、こんなにたくさんの工夫をして「博多織」を知ってもらおうという気持ちが伝わってきました。
— 福岡市立西陵中学校・生徒(一部抜粋)
ただ博多織について知るだけでなく、
自分たちのアイデアを、自分たちで調べ直して、グループで議論してすでに世に出ているものと突き合わて考える。誰のためにつくるのかから真剣に考える。
などの経験を通じて、少しでもこの日の経験が将来活きてもらえればと思って授業していたので本当にうれしかったです。
授業について
はじめは、クイズから入ります。博多織はいちばん何に使われてきたのか。どんな人たちに使われてきたのか。選択肢を見ながら考えてもらううちに、この織物が武士に近い場所で育ってきたことが見えてきます。
そこから献上柄の話へ。独鈷と華皿、そして縞。ひとつひとつの形に、家内安全、子孫繁栄、厄除けといった願いが結ばれています。
博多織は、装う布である前に、祈る布でした。相手の無事を願って手渡されてきた織物が、約800年にわたって続いてきたと伝えられています。
そのあと、帯地に触れてもらいます。西陵中学校では本の栞を。百道松原中学校では、色と柄を自由に組み合わせて自分だけのかたちを。締めたときに鳴る絹鳴りのことや、機械だけには任せられない工程が残っていることも、そこで話します。
耳で聞いて、目で見て、手で触る。先生からも、この順番がよかったと言っていただきました。
献上柄は、贈り物としてはじまった
後半のワークショップに入る前に、もうひとつ話すことがあります。
献上柄という名は、黒田藩が幕府へ献上した歴史に由来すると伝わります。
つまり博多織の代表的な文様は、誰かに贈るための布として名前を得たものでした。願いを込めた文様を織り、相手に手渡す。博多織はもともと、贈り物の布です。
その話をしてから、こういう問いを置きます。
「博多織を帯以外で使うとしたら、あなたは誰に、どんなものを贈るか」
実際に作るわけではなく、チームに分かれて、商品開発の入口を模擬的にたどってみる時間です。
こどもたちの自由な発想
お守り。電車のシート。レッグウォーマー。カードケース。マフラー。ぬいぐるみの衣装。
自分のため、家族のため、友達のため、そしてまだ会っていない未来の人たちのため。贈る相手を先に決めてもらったからか、用途が驚くほど散らばりました。
レッグウォーマー、という発想は私たちからは出てきません。ぬいぐるみの衣装も同じです。ぬいぐるみは、多くの子にとって、いちばん大切にしているものの名前です。
祈りの布をまとわせる相手として、これ以上に率直な答えはありませんでした。
約800年続いてきた織物を、はじめて見る目がどう扱うか。
産地の内側にいる人間には出てこない距離の取り方が、そこにありました。
こちらも大変刺激を受け毎回学びがあります。
なぜ、これをブランドとして取り組んでいるのか

ORIOは、染織文化を次の世代へ織り継ぐことを掲げています。
文化が続かなくなる理由は、価値がないからではありません。
届く形になっていないからです。必要なのは保存ではなく、選ばれ続ける構造のほうだと考えています。
その入口には、二つの扉があると考えています。
ひとつは、触れること。身に着けること。まとうこと。
もうひとつは、つくる側にまわってみること。
授業でひらいているのは後者です。
博多織を「見せられるもの」ではなく「動かせるもの」として渡す。
文様を分解して、並べ替えて、自分の暮らしに引き寄せてみる。
手の記憶は、知識より長く残ります。
そして、贈り物としての織という問いに、いちばん率直な答えを返してくれるのが教室でした。
これからについて
こうした授業は、これからも続けていきます。中学校だけでなく、小学生や高校生に向けた内容も、それぞれの年齢に合わせて実施してまいります。
あわせて、大人に向けたワークショップや、産地をめぐるツアーの準備も進めています。
教室で手を動かしてもらってわかったのは、触れることで変わるのは年齢を問わない、ということでした。むしろ長く福岡で暮らしてきた人ほど、博多織を「知っているつもりのもの」として通り過ぎているのかもしれません。
学校の授業、企業や団体での研修、有志の集まり。かたちは問いません。
染織のそばに立ってみたいという方がいらっしゃれば、お問い合わせフォームよりお声がけください。
授業レポートは、福岡市キャリア探究ポータルに掲載されています。
・授業レポート Vol.8「福岡市立西陵中学校 × ふくや × オリツギ × トータルメディア開発研究所」
中高生の多様な職業体験機会等の創出事業
企画:福岡市/運営事務局:EduPorte株式会社
協力:筑前織物株式会社

