川が革を育て、気候が仕上げる。土地の力が、素材の力になる。

姫路・たつのレザーの起源と歴史

兵庫県姫路・龍野地域は、日本最大の皮革産地です。その歴史は約1000年にさかのぼり、武士の甲冑や武具に用いられた「白なめし革」の技術がこの地に根を張ってきました。

この産地が発展した背景には、土地そのものの力があります。龍野を流れる揖保川の清流が白なめしの水さらし工程を支え、内陸の穏やかな気候が乾燥に適していた。産地の環境が、革の質を長い時間をかけて育てました。

江戸時代から明治にかけて、姫路の皮革産業は武家需要から民間へと裾野を広げ、近代化とともに発展を続けてきました。
現在、姫路は国内の皮革生産の大きな割合を担う産地として、日本の革製品産業全体を広く支える基盤となっています。靴、鞄、ベルト——私たちが日常で触れている革製品の多くが、この産地と深く関わっています。

そして今もなお、なめし・染色・仕上げの多くの工程が職人の手仕事によって担われています。機械化が進む現代にあっても、革の表情を決める判断は人の目と手に委ねられている。その積み重ねが、姫路の革に宿る質と深みの正体です。

約1000年の「革」と約800年の「織」

ふたつを合わせた約1800年の歴史が、AWAIシリーズに宿っています。

この姫路と、博多織の産地・福岡には、歴史的なつながりがあります。
戦国時代、豊臣秀吉の軍師として名を馳せた黒田官兵衛(孝高)は、
姫路城主として播磨の地を治めた武将でした。
官兵衛は九州攻略の指揮を執り、荒廃した博多の町の復興を担った人物でもあります。
そしてその息子・黒田長政が関ヶ原の戦いの功績により、福岡藩の初代藩主となり、博多の地に根を下ろしていきました。
姫路で育ち、博多を拓いた黒田の血筋。
約1000年の歴史を持つ革の産地と、
約800年続く織物の産地がつながる背景には、こうした歴史の糸が静かに流れています。
その縁は、偶然ではなく、必然として。


姫路・たつのレザーの特徴

  • なめらかな手触りと上品な光沢

丁寧ななめし工程から生まれる、きめ細かな表面と品のある艶。手に取った瞬間に伝わる、素材の誠実さがあります。

  • 使い込むほどに深まる経年変化

日常の中で触れるたびに、革は使う人の手の形と記憶を宿していく。育てる素材としての豊かさが、姫路レザーにはあります。

  • 今も続く職人の手仕事

多くの工程が職人の目と手によって担われています。機械では測れない判断が、革一枚一枚の表情を決めています。

姫路・たつのレザーができるまで

革は、原皮から始まり、職人の手を何度も経て、はじめて素材になります。
姫路では今も、この工程の多くが手仕事によって丁寧に積み重ねられています。

01 原皮選定・水漬け

原皮を吟味し、大量の水に浸して乾燥や塩漬けで失われた水分を戻す工程。 革の品質はこの最初の判断で大きく左右されると言われており、 素材の選定に妥協しない姿勢が、仕上がりの差となって現れます。 揖保川の豊かな水質が、この工程をかつてから支えてきました。

02 鞣し(なめし)

腐敗しやすい「皮」を、耐久性のある「革」へと変える、皮革づくりの核心。 姫路に古くから伝わる白なめしは、米ぬかや菜種油を用いた独自の技法で、 しなやかさと上品な光沢を引き出す伝統的な手法です。 なめし方の違いが、革の表情と経年変化の出方を根本から決めます。

03 染色・加脂

なめし後の革に色を入れ、油分(加脂剤)を補って柔軟性を与える工程。 染料の浸透具合や油分の量は、革の状態を見ながら職人が判断する。 同じ手順を踏んでも、革一枚一枚の個性によって仕上がりは異なる。 その違いを読み取り、整えていく経験と感覚が、この工程に求められます。

04 乾燥・空打ち・均し

染色・加脂を終えた革を乾燥させ、 回転ドラムや職人の手でもみ込む「空打ち」によって 繊維をほぐし、柔らかさを引き出す工程。 その後バフィングで表面を均一に整え、 革本来の質感を引き出していく。 機械が担う部分もあるが、 力加減や時間の見極めは職人の経験に委ねられている。 使い込んだときの「あの柔らかさ」は、 この工程で作られている。

05 仕上げ塗装・コーティング

革の表面に顔料や樹脂を重ねながら、 色の均一さ・艶・触感を作り上げていく工程。 薄く何度も重ねることで、使い始めの表情と経年後の深みが決まる。 塗りすぎれば革が呼吸できなくなる。 その加減は職人の目と感覚と知恵に委ねられている。

06 検品・格付け

一枚一枚に目を通し、傷・色ムラ・厚みのばらつきを確認する。 姫路では革をグレードに分け、 用途や品質基準に応じて仕分けする「格付け」まで 職人が担う産地が今も残っている。 素材としてORIOの手元に届くのは、 この最後の判断を経た革だけです。

この産地を選んだ理由

約1000年の歴史が宿る姫路の革と、
約800年の歴史を持つ博多織が出会う。
ふたつを合わせた時間が、いま手のひらに。

姫路レザーは「保存する」ものではなく、「使いながら続いていく」素材です。 持つ人の日常の中で育ち、時間とともに表情を変えていく。 その性質は、博多織が持つ「使うほどになじむ絹の豊かさ」と、深いところで共鳴しています。 ふたつの産地が出会うことで生まれた、AWAIシリーズの素材的な必然がここにあります。

AWAIシリーズ — 博多織 × 姫路レザー